HOMEトピックス一覧2010年のトピックス_2010.05.14

topic_2010.01.13

cERL用2Kヘリウム冷凍システム開発状況 

cERL用2Kヘリウム冷凍システム(先端加速器開発用ヘリウム冷凍設備)の構築は、細山謙二教授を中心に、仲井浩孝氏、小島裕二氏、原和文氏、中西功氏、本間輝也氏、可部農志氏によって行われている。

 東カウンターホールに建設中のコンパクト・エネルギー回収型ライナック (cERL) では、前段加速部(入射部)と主加速部に2種類の超伝導加速空洞を使用する。これらの超伝導加速空洞は2Kの超流動ヘリウムで冷却する。超伝導加速空洞を2Kで冷却するためのヘリウム冷凍設備は、液体ヘリウムを生成するヘリウム液化冷凍機と2Kの超流動ヘリウムを生成する2K冷凍機の部分に分けることができる。ヘリウム液化冷凍機の主要な機器は、物質・材料研究機構および高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所より譲渡され、ヘリウム精製器など一部の機器のみを新規に購入するにとどめることができた。
一方、2K冷凍機は、液体ヘリウムや液体窒素を超伝導加速空洞クライオスタットまで輸送するためのトランスファーラインを含め、すべて新規に製作した。また、超流動ヘリウムの生成は液体ヘリウムの減圧によって行うため、減圧するためのメカニカルブースターポンプおよび油回転ポンプ(減圧ポンプユニット)が必要となる。昨年度はこの減圧ポンプユニットを4セット導入した。このヘリウム冷凍設備は高圧ガス保安法の適用を受けるため、茨城県の完成検査を受検し、合格した後に正式にヘリウム冷凍設備の運転を開始することになる。
施設部をはじめとして、素粒子原子核研究所やその他関係部署の方々のご協力により、昨年度末までにすべての機器と各機器を接続するトランスファーラインの設置を完了することができたが(図1および図2)、配管や配線などの細かい残作業が残っており、また、ヘリウム液化冷凍機の整備に時間がかかるため、茨城県の完成検査は今年度に受検する。まず、2K冷凍機を含まないヘリウム液化冷凍機の部分のみで茨城県の完成検査を受検し、合格した後に液体ヘリウムの生成を開始する。不都合があれば手直しを行い、仕様性能を得るための調整を行って冷凍機を最適化する。次に、2K冷凍機の設置後に再び茨城県の完成検査を受検し、最終的な形での合格を目指す。合格後には超流動ヘリウムの生成を行い、ヘリウム冷凍設備全体としての性能を確認する。 
ヘリウム冷凍設備の2Kでの冷却能力は減圧するポンプの排気能力に大きく依存するので、出来る限り減圧ポンプユニットの数を増やして排気能力を増強することにより、ヘリウム冷凍設備の運転に余裕を持たせることができる。しかし、減圧排気ユニットの排気量が増えるにしたがって、排気されるヘリウムガス中へのポンプからのオイルミストの混入量も増大するため、ヘリウムガスからこのオイルミストを除去する必要がある。また、2Kの超流動ヘリウムの飽和蒸気圧は約3kPaであるため、ヘリウム冷凍設備の超流動ヘリウムのラインは大気圧に対して負圧となり、大気中から空気や水分がヘリウム冷凍設備のラインに混入する恐れがある。短期間の運転では、ヘリウム精製器によってこれらの不純物を除去することができるが、長期間の運転を行う場合には、不純物を充分に除去することができずに配管内に蓄積し、最終的には配管を塞いで冷凍設備の運転が不可能になってしまう可能性もある。したがって、今年度は、ヘリウム冷凍設備を立ち上げるとともに、長期間に亘って安定した運転が可能となるように、ヘリウム冷凍設備の向上を目指した技術的な検討を開始する。また、超伝導加速空洞などの他の機器との信号のやり取りを含めた制御システムや長期運転に備えた人員配置などについても検討する必要がある。            

図1 東カウンターホール内ヘリウム冷凍設備 図2 圧縮機室外のバッファータンク

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