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cERL入射器用2セル空洞の進捗状況
cERLの建設が目前に迫り、開発の急ピッチで進められている。加速器第6系の加古永治准教授、渡邉謙特別助教が中心となって進めているcERL入射器用2セル空洞はCWで運転され、高次モードの減衰にHOM couplerを採用したことからHOM couplerの外導体およびピックアップに用いるフィードスルーの冷却能力不足に伴う発熱が問題の一つとなっていた。その発熱対策として表面電流値の小さいHOM couplerの設計および高熱伝導特性を持つ材料を使用したN型フィードスルーの開発を行ってきた。2011年初めに3台の2セル空洞実機(#3、#4、#5)が完成し、2011年4月~12月にかけて計6回の低温試験(たて測定)が行われた。開発中のN型フィードスルーは先端のニオブアンテナとフィードスルーの内導体をロウ付けしたことから一体物となっている(図1参照)。そのため、ニオブアンテナ部の表面処理やロウ材染み出し部の処理の条件出しが新たな課題となった。6回中2回の試験で表面処理方法などのバグだしを行い、その後行った#3、#5の2空洞の試験ではフィードスルーの発熱無しで最大電界を維持できるようになった。フィールドエミッションのオンセットフィールドは20MV/m以上であり、運転電界である15MV/mに対して十分なマージンが得られている。また、Heの液面、圧力および流量をコントロールすることで冷却条件を出来る限り悪くした状態を作り、性能制限の原因を調査したところ、ビームパイプおよびHOM couplerの外導体の発熱が主な原因であった。30MV/m近くを維持できることまで確認したが、実際のクライオモジュールにおける運転ではさらに冷却条件が悪化する可能性があるため、サーマルアンカーの取りかたをさらに追求するつもりであるが、現状でも十分な安定運転の目処を得た。 |
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図1:2セル空洞と開発中のN型フィードスル |
フォトカソード励起レーザーの開発状況
ERL電子銃開発グループでは、加速器第7系の本田洋介助教が中心となって高輝度電子銃のフォトカソードを励起するレーザーの開発を行っている。ビーム繰返し1.3GHz、ビーム電流10mA、ビームエミッタンス1μmがcERLでの最初の目標である。半導体カソードを励起し適度なビーム品質を実現する為に、波長は500nm帯で、平均パワーはカソード上で1W、レーザー発生装置としては10W程度が必要になる。 |
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具体的なレーザーシステムのスキームを図2に示す。ビーム繰返しに対応した1.3GHz、波長1064nmのレーザー発振器を種光として使用する。発振器は加速器のタイミングシステムに同期される。ファイバ増幅器で数10Wまで増幅したうえで、非線形結晶で波長変換し、2倍高調波の波長532nmを得る。これを、ビーム運転モードに応じて整形し、電子銃へ入射する。高繰り返しで、高平均出力であることがこのシステムの特徴である。繰り返しが高いためにパルス強度は低く、必然的に波長変換の効率が低くなる。そのために高効率、高平均出力の増幅器が重要になる。
増幅器の開発はこれまで産総研で行って来たが、いよいよcERLに導入することを睨んで、今年8月よりレーザー開発の拠点をKEKに移した。KEKではファイバ増幅器を独自に開発するのは初めてなので、レーザー増幅器の原理に立ち戻って、基礎的な試験を積み重ねるところからやり直した。
Yb添加フォトニック結晶ファイバ(PCF)を用いた増幅器を使用する。これは、図3のように、微細構造で光を閉じ込めて輸送する光ファイバで、コアに添加されたYbの準位を励起し、レーザー増幅する。大口径でシングルモード伝搬できると同時に大強度の励起光を導入できる点が特徴のファイバ増幅器である。はじめに、比較的低出力で特性試験を行い、動作モデルを確立した。それを踏まえて、ファイバ長や入力強度等を最適化し、高出力の試験を行った。これまでのところ、図4に示すように、35W以上の増幅出力が得られた。これは計算で良く理解できている。また、数時間で+-0.5%以内の安定性が確認できており、十分にcERLの初期の電子ビーム電流を担保するシステムの目処が立ったと言える。 |
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図2 レーザーシステムの構成 |
図3:PCF増幅器 |
図4:強度試験の結果 |
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