ビームラインの再編・統廃合について9

  

2011年10月18日


 PFでは、2005年度に行われたPFリング直線部増強に基づきビームラインの再編・統廃合を進めてきました。この間のビームライン戦略については前回の記事にまとめさせていただいているとおりですが、直線部の最大有効活用がこの間のビームラインの再編・統廃合においては重要なポイントでした。2005年4月の実験ステーション数は72でしたが、2011年10月現在52となっています。この数字は、2005年のPFレビュー委員会で推奨されたPFに適切な実験ステーション数30−40の数字までには溝がありますが、2011年10月6、7日に開催されたPF-SAC(Science Advisory Committee)ではこの減少は評価されました。

 PFではこれまでのビームライン再編・統廃合を第1期と位置づけ、これ以降第2期計画としてさらに整備計画を進めていく方針です。その手始めとして、最後の短直線部を利用してSGU(短周期アンジュレータ)を光源とするビームライン新BL-15の建設を進めます。この新BL-15については、関連ユーザーグループとの打合せ、PFシンポジウム、PF-SAC、さらに2011年9月7-8日には、PF研究会「PFにおけるマイクロビームを利用したXAFS、XRF、SAXS実験の展望」でご議論いただき、高分子フィルムや生体膜などの多様な膜構造、天然物や工業材料など不均一な分布をもった物質構造を複合解析手法(SAXS やXAFS/XRF など)により解明するSGUベースのHX(硬X線)ビームラインを建設することで検討がまとまりつつあります。 このビームラインの最大のポイントは、2.1keV から15keVまでの比較的広いエネルギー領域を使用することが必須条件のXAFS/XRF実験と、輝度の高いビームを必要とする小角散乱実験との摺り合わせでしたが、SGUとしては、周期長16mm で偶数次光も利用することにより高輝度性と連続性を確保することとしました(図1参照)。偶数次光ではビーム発散が大きくなるため光源輝度では奇数次光より相当に小さくなりますが、集光光学系を組むことでビームを集めることにより、奇数次光と比べても十分な強度が得られることをレイトレース計算で確認しています。もう一つのポイントは空間スペースで、光軸方向に長い実験装置を必要とする小角散乱実験と、上記の集光光学系を配置して十分な実験スペースが確保できるかが問題でした。現在の案では、図2に示すようなタンデム配置に落ち着きました。今後、外部予算の獲得も視野に入れて計画を煮詰めて行くことになります。

 

 

図1.周期長16mmのアンジュレータ(SGU)光源輝度

(図を大きくする)

 

 

 

 

図2.ビームライン配置検討案

 

 

 現在、BL-15には3つのHX領域を利用するビームラインが設置されています。BL-15AはX線小角散乱ステーション、BL-15B1は白色X線トポグラフィおよび汎用X線実験ステーション、BL-15B2は表面界面X線回折実験ステーション、そしてBL-15Cは精密X線回折実験ステーションが設置されてきました。そのうち、BL-15AについてはすでにBL-6Aへの移設が2011年夏のシャットダウン中に終了して、現在BL-6Aでは新実験ステーションの立ち上げ調整が行われ、10月中旬からは共同利用実験が開始されます。BL-15B1、BL-15B2そしてBL-15Cのアクティビティーは、2013年以降にBL-20Bへ移設されることになっています。現在、BL-20Bには多目的単色・白色HXステーション(Australian Synchrotron)が設置されていますが、協定は2012年12月末までとなっていますので、BL-15B1&2、BL-15Cの移設は2013年夏に行う予定です。

 そのほか、いくつかのビームラインで統廃合について検討を始めております。このような議論を進めるにあたり、対象となるビームラインを使用されているユーザー、該当ユーザーグループおよびメタユーザーグループ、さらにはPF懇談会メンバーの方々にご理解とご協力をいただく必要があります。ビームラインの再編・統廃合はPFを最大限に活用することを目的としています。PFスタッフの適切な配置、予算の効果的な集中によりアクティビティーの最大化を図ることを目指すものです。したがって、現在あるいは直近ではなく将来を見据えた議論が求められます。PF-SACでの議論も踏まえて、現在52ある実験ステーションを2、3年後には45程度にまでにして行くことが必要であると考えています。厳しい議論も当然行われると思いますが、ユーザーの方々がこれらの議論に積極的に関わっていただくようお願いします。


 

 



<<ビームラインの再編・統廃合に関するこれまでのお知らせ>>

2011年1月 お知らせ8

2010年5月 お知らせ7

2009年2月 お知らせ6

2008年4月 お知らせ5

2007年9月 お知らせ4

2007年2月 お知らせ3

2006年7月 お知らせ2

2005年6月 お知らせ1

<<戦略ワーキンググループ会議議事要録のページ>>

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