ビームラインの再編・統廃合について7  

2010年5月24日


 

 PFリングでは2005年に行われた直線部増強を最大限に活用するためのビームライン整備が引き続き行われています。このシリーズもすでに7回目となります。PFにおけるビームラインの再編・統廃合のついての基本的な方針は、これまでの6回のお知らせで繰り返してきておりますので、詳しくは前回までのお知らせをご覧ください。

 まず、BL-1では、外部資金(ターゲットタンパク研究プロジェクト)により、微小タンパク結晶の低エネルギーSAD測定が行えるタンパク質結晶構造解析用ビームラインを2009年夏のシャットダウン中に建設しました。PFリングでは3番目のショートギャップアンジュレータで、1次光が4keV近辺になるように製作しています。昨年10月から12月のビームタイム中に液体窒素冷却方式のSiチャンネルカット結晶分光器を設置し、放射光による本格的な光学調整を行いました。2010年2‐3月には単色光を集光するバイモルフミラー、試料周辺機器そしてX線CCD検出器などの設置・調整を行いました。2010年5月17日から放射光共同利用実験に公開しています。詳しくはプレスリリースをご覧下さい。 これに伴い、タンパク質結晶構造解析用ビームラインとしてBL-5AAR-NW12ABL-17A、BL-1Aと4本の挿入光源ビームラインが整備されたことになります。リソースを集中する意味でも、長年に亘りタンパク質結晶構造解析用に使用されてきた偏向電磁石光源を利用するBL-6Aは、2010年3月末を以ってタンパク質結晶構造解析としての使用を停止することになりました。今後他目的への転用を進めていくことで検討が行われています。

 PFには中長直線部が10か所あります。RFが2か所、入射部が1か所を占めていますので、残りの7か所に挿入光源BLが設置されています。そのうち5か所はVSX領域に専用化したビームラインが整備してきています。 BL-13は、従来X線利用研究とビームタイムをシェアしてきましたが、2009年の夏期シャットダウン中に、有機薄膜に関する研究を行うためのVSX専用BLとして生まれ変わりました。2009年10月に初めて光を導入し、その後BLの光学調整を進め、2010年1月29日から共同利用実験を開始しました。本ビームラインでは、高分解能角度分解紫外光電子分光、高分解能内殻光電子分光、高分解能軟X線吸収分光等を駆使して、有機薄膜とその界面の構造、電子状態、振電相互作用、ダイナミクス、およびそれらの時間的・空間的変動等に関する精密な研究が始まっています。より詳細な情報は、Photon Factory News, 27(3) 11(2009); 27(4) 9(2009); 28(1) (2010)およびPFのVUV/SXステーション一覧をご覧ください。BL-13Aの主力実験装置である高分解能光電子分光器SES200は、これまでBL-11Dで使用されてきたものに改良を加えたものです。一方、BL-11Dは、反射率計が常設されVSX領域の光学素子を評価するための専用ビームラインとして整備が進められています。これに伴い、VSX領域の反射率測定が行われてきたBL-12Aは2010年6月末で閉鎖の予定です。

 BL-16は、これまでのお知らせにもあるように、2台のAPPLE-II型アンジュレーターとキッカーを用いて、高速可変偏光スイッチングが行える軟X線分光ラインを整備していますが、2010年夏期シャットダウン中に念願の2台目のアンジュレーターが設置される予定です。秋から高速偏光スイッチング(~10Hz)の調整およびテスト実験が始まります。

 そのほか、BL-2、BL-19、BL-28がVSX専用化した挿入光源BLですが、BL-13も含めて、挿入光源自体はリングの直線部増強以前のものをそのまま利用している状況で、挿入光源の更新を検討しています。

 VSX領域をカバーする偏向電磁石を光源とするビームラインについて再編・統廃合が進んでいます。東京大学スペクトル化学センター所属のBL-7B(1m瀬谷波岡型分光器)は、2009年6月末に閉鎖されました。また、PFの共同利用開始以来運転されてきたBL-11Cの固体分光ビームライン(1m瀬谷波岡型分光器)も2010年3月を以って閉鎖しました。いずれも、ビームライン性能が競争力を失ってしまったこと、ビームタイム需要が低下してきたことが閉鎖の直接的な要因です。これらのビームラインへ向けられていたリソースは上述の挿入光源ビームラインへ集中的かつ効果的に投資されます。

 VSX領域の中では高エネルギー側を受け持つ二結晶分光器ビームラインBL-11Bでは、2009年夏にPF運転開始以来使用してきた分光器の更新をしました。旧BL-28Bで使用されていた高冷却性能を有し、3種類の結晶をマウントできる分光器が設置され、利用実験の効率化が期待されます。

 中長直線部の1か所に設置されている縦型超伝導ウィグラーからの縦偏光高エネルギーX線を利用する研究がBL-14で行われています。そのうち、BL-14Cにはタンデムに二つの実験ステーション(14C1:位相コントラストイメージング、 14C2:高圧プレスMAX-IIIを用いた回折実験)が行われてきましたが、位相コントラストイメージングに専用化するため、2009年の夏のシャットダウン中ハッチ改造を行いました。BL-14C2のMAX-IIIはPF-AR北東棟のAR-NE7Aに移設しました。AR-NE7は、PF懇談会およびコミュニティの強い要望に依り、2008年夏に素核研からPFに譲渡され放射光用ビームラインとして整備してきたビームラインです。2008年度夏期シャットダウン中にAR-NE3に高スループットのタンパク質構造解析用ビームラインが整備されたとき、AR-NE5Aは閉鎖されました。ここでのアクティビティーもAR-NE7Aで引き続いて行われることになっています。

 




<<ビームラインの再編・統廃合に関するこれまでのお知らせ>>

2009年2月 お知らせ6

2008年4月 お知らせ5

2007年9月 お知らせ4

2007年2月 お知らせ3

2006年7月 お知らせ2

2005年6月 お知らせ1

<<戦略ワーキンググループ会議議事要録のページ>>

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