ビームラインの再編・統廃合について8

  

2011年1月12日


 PFリングでは2005年に行われた直線部増強を最大限に活用するためにビームライン(BL)整備が引き続き行われています。このようなBLの再編・統廃合はPFリングに限ったことではなくPF-ARリングについても進められています。この作業は、以下のような基本的な方針に沿って行われています。

  1. 挿入光源へ集中投資。
  2. ベンディングについては、需要の高いところに投資を集中し、アクティブでないBLを閉鎖。
  3. PFリング:中長直線部は主としてVSX専用化。短直線部はショート・ギャップ・アンジュレータ(SGU)を光源とするHXのBLとして整備。
  4. PF-AR:高エネルギーX線実験および時分割実験を推進。

 図1には、PFリングにおけるBLの様子を、(a)2005年4月と(b)2010年12月末で示しています。(a)に示すように5年前の実験ステーションの数は60でしたが、(b)の現在では、46まで減少しています。注目していただきたいのは、直線部です。中長直線部のBL-13およびBL-16ですが、(a)では、HXとVSXのハイブリッド・ビームラインとなっていますが、(b)では、VSX専用のビームラインとして整備されました。BL-1、3、15、17が短直線部に相当しますが、(a)では、BL-17 に最初のSGUベースのビームラインが建設中となっています。(b)ではBL-17に加えてBL-1とBL-3がSGUビームラインとして整備されています。(a)において、BL-16AはマルチポールウィグラーからのHXを利用した構造物性研究が活発に行われていましたが、このアクティビティーは(b)では、BL-3AのSGUを光源とするHXビームラインへ移行され、研究が継続されています。
 図2には、PF-ARの状況を示しています。2005年4月(a)には、NW10とNW14は建設中で実験ステーションは8でした。2010年12月末(b)でも8ですが、挿入光源を光源とする実験ステーションが5となっていることは特筆すべきことです。BL-13のVSX専用化以前、BL-13Aで行われていた高圧実験は、高エネルギーHXが利用できるNE1Aに移行されました。NE3には新たに製薬開発を視野に入れたタンパク質結晶構造解析ビームラインが整備されました。従来、NE3Aで培われた核共鳴分光の利用技術はNE1Aにおける高圧実験に有効に活用されることになっています。また、PF-ARでは、3本の偏向電磁石ビームラインが整備されて来ていますが、これらのBLにおいては高エネルギーHXを積極的に利用する研究が行われています。
 以上、2005年以降現在までに行われたビームラインの改編・統廃合の概要を記しましたが、さらに上記の基本原則に従った作業が進められています。

2005 PFring  2010 PFring

(a)                            (b)

図1 PFリングにおける(a)2005年4月と(b)2010年12月末のBL状況。

2005 PF-AR   2010 PF-AR

(a)                           (b)

図2 PF-ARにおける(a)2005年4月と(b)2010年12月末のBL状況。


 前回(2010年5月24日)の記事では、主としてBL-1AおよびBL-13Aについて報告しました。それぞれ、解決しなければならない諸問題はありますが、おおむね順調に調整が終了しており放射光利用実験が進められています。
 BL-16Aは高速可変偏光スイッチング測定が行える軟X線分光BLで、PFが強力に推進しているユニークなBLの一つです。2010年夏のシャットダウン中に、念願であった2台目のアンジュレータが設置され、10月以降、左右円偏光の高速スイッチングによる極微小なMCD信号の検出を実現し、これを利用実験に提供するための調整が行われています。技術的には難しい問題が多いのですが、スタディーを重ねるごとに性能は着実に向上しており、0.1%以下の極微小なMCD信号の取り出しが間もなく可能となります。また、BL-16AはAPPLE-II型のアンジュレータを採用しているため、水平・垂直直線偏光の高速スイッチングも可能になります。これを波長分散型XAFSと組み合わせることによって、表面における化学反応中の化学種と配向の変化のリアルタイム追跡を可能にすべく、2011年からスタディーを開始します。
 BL-12Aは、主として軟X線領域における光学素子評価に関する実験が行われてきましたが、BL-11Dが光学素子評価素子専用BLとして整備されましたので、2010年12月を以って閉鎖しました。

 上述のように、BL-1、3、17には、すでにSGUを光源とするHX用BLが整備され、利用研究が行われています。唯一残されたBL-15については、2009年春に建設提案を受け付け、ヒアリングを実施し、施設内部だけでなく関係ユーザーグループの方々にも加わっていただいて検討を重ねてきました。現在のところ、SGUの高輝度ビームを活かし、多様な膜構造の研究や、不均一な分布をもった物質構造の研究を展開する方向で検討を進めています。検討状況や今後の計画については、2011年3月のPFシンポでご紹介する予定です。一方、現在のBL-15ではA、B1、B2およびCの4実験ステーションを使った利用実験が行われています。これらの移転先についても同時に検討を行っており、中でも、BL-15Aについては同じような光学系を組むことが可能なBL-6Aへの移転を小角散乱ユーザーグループと共に煮詰めており、既にハッチ及びデッキの建設が開始されています。

 



<<ビームラインの再編・統廃合に関するこれまでのお知らせ>>

2010年5月 お知らせ7

2009年2月 お知らせ6

2008年4月 お知らせ5

2007年9月 お知らせ4

2007年2月 お知らせ3

2006年7月 お知らせ2

2005年6月 お知らせ1

<<戦略ワーキンググループ会議議事要録のページ>>

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