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ERLから得られる光の特徴 (6)共振器型X線自由電子レーザー

X線領域で共振器を組む


これまで、X線自由電子レーザーにおいては、「X線領域では共振器を組むために必要な反射率の高いミラーがないので、共振器を組むことはできない」という考え方が主流でした。そのため、「共振器を組む代わりに長いアンジュレータを設置し、レーザー媒質である電子ビームと光が相互作用する長さを十分確保することで、レーザー発振の飽和を実現する」というのが、SASE方式のX線FELの主眼でした。

 しかし実際には、ダイヤモンド結晶の背面反射を用いることにより、X線領域で共振器を構成するというアイデアは、1984年にCollelaとLuccioらによって提唱されており、また最近になって、ERLの優れた電子ビーム特性と超伝導加速による高繰り返し電子ビーム運転を利用して、共振器型のX線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser Oscillator; XFEL-O)が実現できるという論文が、APSのKwang-Je KimとYuri Shvyd'koらによって報告されています (K.-J. Kim, S. Reiche, Y. Shvyd'ko, PRL 100, 244802 (2008))。 その概念図を、下の図に示します。

図17.png

アンジュレータの中を通る電子ビームと、ダイヤモンド結晶で構成される共振器内に閉じ込められたX線パルスが相互作用することにより、進行方向にも横方向にも波面が揃ったX線レーザーが発振します。これはまさに、シングルモードのX線自由電子レーザーです。XFEL-Oに必要とされる電子ビームの性能と、得られる光の性質を下の表にまとめました。前節で述べたとおり、このX線レーザー光のエネルギー分解能は10の-7乗ですので、そのエネルギー幅は10keVに対して、1meVです。この中に1パルスあたり10の9乗個のフォトンが放射されるので、その輝度は極めて高く、その平均輝度は10の27乗に達します。

図10M.png
XFEL-Oの空間・時間コヒーレントX線

Electron Beam Energy 7 GeV
Bunch length 1 ps
Emittance 0.2 mm-mrad
Repetition rate 1 MHz
Undulator 60 m
X-ray energy range 5-25 keV
Band width 10-7
photons/pulse 109

このような、空間的にも時間的にもコヒーレンスを持つX線は、人類にとって未知の光です。この光は、どのような利用実験に生かすことができるでしょうか? XFEL-Oは、ERL技術を基盤として、放射光のフロンティアをさらに発展させるものです。ERL光源の優れた電子ビーム特性と超伝導加速技術は、人類未踏のサイエンスを切り拓く大いなる可能性を秘めています。


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