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エネルギー回収型ライナック光源(Energy Recovery Linac)情報サイト


ERLって何? (1)

はじめに

 1982年にフォトンファクトリー(PF)が運転を開始して、すでに30年近くが経過しました。今、ユーザーコミュニティーの力を結集して、PFの後継機である次世代放射光源の実現に向けた取り組みを行うことが急務となっています。

 これまでの放射光研究の歴史を振り返ると、放射光利用研究は放射光源の性能向上とともに進化してきました。放射光源は、これまで第1世代(高エネルギー加速器を間借り利用)、第2世代(占有利用・偏向電磁石利用)、第3世代(挿入光源利用)と、蓄積リングを基盤として進化を続け、この進化の流れは、ライナック(線形加速器)を基盤とする第4世代光源へと進みつつあります。

 多くの放射光ユーザーにとって、これまで最も重要であった光源性能は実効的な輝度の向上でした。放射光源の進化とともに、光学素子に余計な熱負荷をかけることなく、より小さな試料上に、望みのビームサイズで、望みのエネルギー分解能の、指向性のよい放射光が届けられるようになってきました。KEKでは、この特徴をさらに進化させる次世代放射光源として、エネルギー回収型ライナック光源(Energy Recovery Linac; ERL)を提案しています。ERLはライナックを基盤とする光源でありながら、リング形状を取ることで、多くの放射光ユーザーが最先端の光源性能を同時利用することを可能にする光源です。

 さらに、次世代放射光源は、実効的な輝度の向上だけに留まらず、今後20数年に渡って世界の放射光サイエンスのトップレベルを牽引すべきものです。そのために重要となる放射光のキーワードは、回折限界、空間コヒーレンス、短パルス性そして時間コヒーレンスです。KEKでは、これらの先端的な光源性能を実現するための光源として、ERLを位置づけています。このセクションでは、ERLから得られる光の特徴について詳しく解説します。