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エネルギー回収型ライナック光源(Energy Recovery Linac)情報サイト


ERLって何?(3)

なぜエネルギーを回収する必要があるの?

ERLでは電子がリングを1周周回し、減速してから廃棄されます。なぜいちいち減速してから廃棄する必要があるのでしょう。ライナックに戻ってきたところで減速せずに廃棄したらどうなるのでしょうか。例えば、リング電流100mAで、加速エネルギー3GeVの電子ビームをライナックで加速したとします。この場合、電子ビームの平均パワーは3GeV×100mA=300MWとなります。300MWの電子ビームをもし減速せずにそのまま止めてしまうと、止めたところで大量の熱と放射線が発生することになります。ちなみに蓄積リングでは同じ電子が周回するので、放射光によって失われたエネルギーを補うだけでよく、このような問題は生じません。
ERLでは、加速した電子ビームを廃棄する前に、ライナックで減速することによって、エネルギーを回収し、必要な電力を抑えるとともに、ビームを安全に廃棄できるように工夫されているのです。

ERLは超伝導加速空洞技術によって初めて実現した光源加速器

図13s.png
通常のライナックでは銅製の常伝導加速空洞が用いられています。この常伝導のライナックでは高い繰り返しで電子ビームを加速することができず、100mAという高い電流をERLに周回させることができません。しかし、高周波損失の小さい超伝導体製の加速空洞をライナックに使用することにより、1.3GHzという高い繰り返し周波数で電子ビームを加速することが可能になり、100mAという高い電流を加速することができるようになったのです。ERLは超伝導加速空洞技術によって初めて実現した光源加速器と言えます。(図はERL主加速部の超伝導加速空洞)