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ERLから得られる光の特徴 (3)空間コヒーレンス

ERLから得られる光の空間コヒーレンス


ERLから得られる光は、非常に小さな発光点から放射されるので、高い空間干渉性(コヒーレンス)を持っています。ここでいう空間コヒーレンスとは、レーザー光源のように光源自体がコヒーレントな機構を持つために生じるコヒーレンスではなく、むしろ小さな光源を遠くで見ることによるコヒーレンスであり、「伝搬によるコヒーレンス」と呼ばれます。
 伝搬のコヒーレンスを利用する研究は、これまでの蓄積リングを基盤とした放射光実験で培われてきましたが、小さな光源サイズを実現するためには、どうしても光のごく一部だけを切り出す必要があり、フォトン数の不足が大きな問題となっていました。しかし、ERL光源において、小さなビームサイズが実現することにより、光を切り出すことなく利用することができ、伝搬によるコヒーレンス利用実験の利便性が大幅に向上します。

 有限なサイズσの光源から放射された波長λの光が、光源から距離Rだけ離れた所に置いた間隔dの二重スリットを通ったのちに、スクリーン上で干渉するための条件は、以下のように与えられます。

図15ss.png

このdをコヒーレント長と呼びます。例えば、サイズが7.5マイクロメートルのERL光源から放射される波長0.1ナノメートルのX線を、光源から100メートル離れたところで利用する時、コヒーレント長は約200マイクロメートルです。言い換えれば、このX線で200マイクロメートル以下の物体を照射すれば、物体の干渉像が得られ、原理的には、その干渉像から物体の原子オーダーの内部構造を知ることができることになります。

参考:ビームライン光学技術入門 第11章 光のコヒーレンスを使う(百生 敦)